鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

悪夢の軍備拡大政権  第168回

2023/10/25
  ロシア軍によるウクライナ侵攻の悲惨ばかりか、あらたにパレスチナ・ガザ地域での交戦が加わり、世界はあっという間に戦争に包まれてしまった。 

  普段でさえ、出入りをイスラエル兵士によって厳重に管理されている、あの窮屈極まりない、逃げ場のないガザ地域で、辛うじて空いている天空から、ミサイルが降ってくるのは、想像するだけでも恐怖に襲われる。 

  ついこの間まで、新型コロナでの死者を数えて恐怖していたが、いまは民家にミサイルが飛び込み、路上に死体が転がる状況が日夜、報道されている。麻生太郎・自民党副総裁の台湾有事を煽る「戦う覚悟」など、この現実をみれば、決して許されない妄言だ。 

  九州・飯塚市で、炭鉱労働者の膏こう血けつを絞って、山の一郭に東京ドーム2個分、建坪800坪の「麻生王朝」を築いた先祖の3代目には、戦争はリアルな殺し合いとしてより、儲けの対象としてしか思えないのであろう。 

  一方、満州に君臨し、戦後、「戦争犯罪人」として巣鴨プリズンに収容されていた祖父の3代目( 安倍晋三) は、「日米一体化」の軍事同盟の強化を米国に約束して長期政権。彼の死後も、その派閥に支配されている岸田3代目は、ご無理ごもっとも政治で、防衛予算をほしいまま。 

  24年度予算、軍事費の概算要求は、7兆7千億円。これまで、GDP(国内総生産)比1%、「専守防衛」を厳守してきたのを、5年間で43兆円、2%と2倍にする。 

  敵基地攻撃能力の保有を本格化させるために、「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)を強化し、米軍のIAMDと一体化させる。このため、米国製巡航ミサイル「トマホーク」を400発(2113億円)購入する。それも200発は、25年度からと1年前倒しにした。 

  米政府に要求されたまま軍備増強、世界第3位の軍事予算で臨戦態勢にする方針だ。南西諸島にミサイル駐屯地を設置、戦争へ、戦争へ。それが、安倍、菅、岸田3代にわたって強化された、戦争準備だ。戦争と原発再稼働を止める。これが当面最大の課題だ。