鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

真逆の再エネ弾圧政策  第169回

2023/11/01
  ロシアのウクライナ侵攻によって物価が上がり、それに円安が拍車をかけている。それを奇貨として、電気料金が上げられ、その間隙を縫って、岸田内閣はあろうことか、原発を復権させようとしている。「原発最大限の活用」など、まるで泥棒猫のような卑劣な政策だ。

  使用済み核燃料の解決策にはまったくメドがたたないのに、再稼働ばかりか、新増設などの妄言は、とにかく、原発を再稼動させよう、という姑息な作戦である。 

  電力会社の儲けを最優先、住民の健康、いのち、環境、子どもたちの将来よりも、電力会社の欲望に従属する悪魔の選択、といって言い過ぎではない。 

  汚染水の放流がまき起こした国際的な批判。風評被害に苦しむ漁民の精神的、経済的な打撃ははかり知れないほど大きい。それをカネで解決する、というのは、原発の建設過程からすべてカネで解決してきた、原子力政策の悪弊だ。 

  福島事故の直後、原発が一斉に停止したが、日本列島は真っ暗にはならなかった。この夏、地球が「沸騰」するほどの猛暑だったが、「電力不足」にはならなかった。むしろ電力会社は、逆に太陽光や風力発電などの「再生可能エネルギー」の出力にブレーキをかけ続ける。

  「全国の大手電力が2023年度上半期(4〜9月)に再生可能エネルギー事業者に対し一時的な発電停止を求める出力制御を計194回実施していた」(「東京新聞」10月17日)。 

  出力制御は電力が余るとエネルギーがムダになったり、電圧や周波数に悪影響がでて停電になる。それで、自然エネルギーの発電事業者に負担を押しつけ、発電しても買わないからと強制する。

  これは本末転倒だ。最も危険な原発を推進、稼動をつづけ、環境にまったく負荷がかからない再生可能エネルギーを止める。アベコベが罷り通っている。 

  経産省に巣をつくっている、原発利権の岩盤が再エネを弾圧して、原発を最優先。それで、再エネ産業は欧米にはるかに遅れをとった。送電線を電力会社が独占。発電しても送電できないシステムを護持している。