鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

南西諸島の日米一体化 第170回

2023/11/08
  ガザ地区にたいする、イスラエル軍の猛攻撃を視ながら、戦時中の日本各地で空襲された、恐怖の体験を想い起こした。ヒロシマ、ナガサキのひとたちは、とりわけ苦しんでいるであろう。 

  わたしの故郷は幸いなことに空襲はなかった。それでも、40㌔ほど離れている青森空襲は記憶にある。大人たちが屋根に登って北の方向を指差し、驚きと恐怖の声を上げていた。 

  ガザの瓦礫となったコンクリートづくり、集合住宅の跡地で遺体を掘り起こしているひとたちの映像は心痛い。20年前に一泊だけ、ガザ市内で民泊しただけだが、あの狭い地域に降りそそぐミサイルが目に見えるようだ。沖縄の宮古島、石垣島、与那国島など、南西諸島に住む人たちにとっては、かつての恐怖につづく明日の姿として、身震いするほどであろう。 

  10月下旬、米海兵隊と陸上自衛隊との「米日共同訓練」(レゾリュート・ドラゴン、不屈の竜)がはじまった。これまで、北海道や東北で実施されてきたのだが、今回は南西諸島の部隊も参加。自衛隊5千人、米軍1400人が参加した。 

  岸田首相になって急速に「防衛力の南西シフト」が強化されている。ついこの間、建設反対運動を見てきた石垣島では、今年3月に陸上自衛隊の駐屯地が開設された。射程を200㌔から1千㌔に伸ばされる「12式地対鑑誘導弾」が導入され、やがて部隊が配備される。オスプレイが飛来し、PAC3(地対空誘導弾)部隊がやってくる。 

  先の戦争では沖縄は本土防衛に利用された。が、いまや嘉手納基地ともども、要塞島とされ、敵基地攻撃能力の基地に転換した。が、こんどはかつてのように、犠牲を押しつけられる、沖縄の悲劇だけでは終らない。海岸に原発を配置した列島全部が危ない。 

  在沖米軍トップの第3海兵隊遠征軍司令官と陸自西部方面総監とが、共同で記者会見。「訓練は日米の即応性を確保するために重要だ。我々が共にいることで一番強くなる」と語った。(「朝日」) が、しかし、「ともに戦うことで一番危険になる」と理解すべきだ。