鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

秘密の核施設誘致(下)  第182回

2024/02/21
  能登半島を襲った大地震のあとでは、原発新増設などという岸田首相の妄言は、もはや犯罪的といえる。足元を見よ。原子炉下の脆弱な地殻、かぼそい避難路、行き場のない核廃棄物処分場。どれひとつ見ても、核施設の立地は無理だ。 

  そのためもあってか、中国電力は関西電力と共謀して、秘密裏に上関町長を説得、原発建設予定地内に、使用済み核燃料の中間貯蔵所を持込むことを決めていた。そして、大地震後、いきなり「ボーリング調査」と称して森林伐採をはじめた。反対運動が強まる前の、抜き打ち作業。

  核燃料の中間貯蔵所は青森県むつ市に、東京電力と日本原子力発電との共同の施設が1カ所ある。建屋は2013年に完成したが、安全性が確認されないために使用されず、さらにそのあとに六ヶ所村の再処理工場の稼動は、試運転に失敗して20年も経って、いまだ稼動の見通しにない。 

  関西電力はどこにも中間貯蔵所をもつことができず、中国電力と相乗りでようやく「上関原発」予定地での「地質調査」に漕ぎ着けた。原発の危険性とは、大事故で日本列島を汚染するばかりではない。計画当初から秘密主義が支配し、議会民主主義を否定しながら、すべて強権的に進められてきたことだった。 

  上関町の山戸孝議員は反対運動を組織した山戸貞夫元議員の後を受けて、町議会で活躍しているのだが、かれの質問に対して、西町長は「使用済み燃料はゴミではなく資源であると考えている」とウソ答弁している。 

  中間貯蔵所の適地かどうか、これから1年かけて調査する、というのが中国電力の見解だ。その場しのぎの欺瞞でも、とにかく、建設すればいいという大企業と、交付金にありつこうという刹那的な行政の長。そしてそのバックにいた、安倍晋太郎、安倍晋三の一族。安倍派幹部の西村康稔前経産相などの、自民党幹部たち。すべてカネだ。 

  もう自然は破壊しない。その誓いがますます強まっている。(前々回で紹介した「纐纈さん」は(はなぶさ)のまちがいでした。謝罪して訂正します)。