鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

岸田で深まる対米従属  第192回

2024/05/01
  国賓が日本の財布背負って行き 「朝日新聞」川柳欄に掲載された、円口邦昌さんの川柳である。 

  「国賓待遇」とかの扱いで訪米した岸田首相、夕食会に向かう大統領専用車の中で、バイデン米大統領とご機嫌で頬を寄せ合わんばかりの写真を、Ⅹ(旧ツイッター)に投稿し、各紙の紙面を飾っていた。バイデンと買弁首相の虚飾の図と言うべきか。 

  「日米共同声明」の冒頭は、「3年間を経て、日米同盟は前例のない高みに達した」というものだった。「日米協力の新時代」「グローバルなパートナーシップ」とか、おたがいに絶賛しあった。 

  バイデン大統領は、「核を含むあらゆる能力を用いた、日米安保条約第5条の下での、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて表明した」と語り、岸田文雄首相は「日本の防衛力と役割を抜本的に強化し」という。 

  「核を含むあらゆる能力を用いた」「防衛力的な抜本的な強化」など、あたかも近い未来の戦争を想定した文言が使用されている。 

  「我々は、日本の防衛力によって増強される米国の拡大抑止を引き続き強化することの決定的な重要性を改めて認識し、二国間協力をさらに強化していく」 

  日本の防衛力強化策は米国のため、と露骨に主張している。不思議なことに、マスコミには、この屈辱的な、先の川柳の視点のような「鴨ネギ」批判が見られなかった。 

  たとえば、「毎日新聞」は一面トップで「日米首脳『世界で協働』 共同声明 同盟「前例のない高み」と褒めたたえ、3面トップで「日米深化 専制主義に対峙」と軍備強化による抑止論を強調している。 

  これから、自衛隊の指揮系統は、米軍に従属、そして米兵器のバカ買い。そして日本製兵器の「死の商人」輸出の解除である。22年度の兵器調達額は、それまで数十年来トップを張り続けてきた三菱重工が、驚くべきことに、米国政府にトップの座を奪われている。 

  アメリカの戦争のために死ぬ? 君死に給うこと勿(なか)れ!