鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

ミサイルと石垣島(下)  第197回

2024/06/12
  1972年5月の本土「復帰」のあと、この52年間で沖縄の自衛隊施設は4・9倍にふやされた。国土面積の0・6%の沖縄に、米軍基地の7割が集中している、と言われながらも、自衛隊が配備され続けてほぼ5倍、異常というべきだ。 

  「本土」に住むわたしたちは、あまりにも、無関心、無頓着だ。 

  日米合同演習がはじまり、5月中旬、エマニュエル駐日米大使が、与那国島の空港に軍用機で降りたった。「日米同盟の戦力強化」の実際を視察した、という。 

  「ミサイルを並べ立てたら、こっちから中国にけんかを仕掛けることになる」。石垣島の花谷史郎さんの言葉を、わたしは7年前に紹介していた(「東京新聞 本音のコラム」2017年1月10日)。しかし、非戦を誓った日本国憲法の許もとで、かつて4人に1人が戦争の犠牲者となった沖繩で、さらに沖繩本島よりもはるかに小さな孤島群で日米一体の戦争準備が急速に進められている。この対米従属、無責任な自公政権に、わたしたちは厳しい批判をしてこなかった。 

  沖縄本島北部の東村高江のオスプレイ基地建設反対運動や辺野古新基地建設反対運動にはなんどか参加した。が、米軍基地はそれだけではない。エマニュエル大使や米インド太平洋軍のアキリーノ司令官や日米海兵隊を統括する第3海兵遠征軍のターナー司令官も海兵隊の輸送機で先島に着陸している。日米共同訓練や部隊派遣はすでに織り込み済みだ。 

  鹿児島の南、馬毛島が防衛省に買収、航空兵へい站たん基地とされ、その先の奄美大島が海上兵站基地。沖縄本島には陸海空の旅団や航空群で7千人ほど駐留。久米島に航空隊、宮古島、石垣島、与那国島にミサイル配備。琉球孤はハリネズミのように武装させられる。「平和の島」の要塞化はイメージするだけで、息苦しくなる。 

  石垣島の山里節子さんに電話をかけた。「物理的にミサイルがなん本たてられようが、平和を愛する島のこころをもちつづけ、喜怒哀楽を歌ったり踊ったり島と一緒に乗り越えていきます」。彼女は三味線の名手なのだ。