道しるべ

「失われた30年」の姿反映

2024/07/10
骨太方針2024

 6月21日、岸田内閣で3回目の「骨太の方針」が閣議決定された。その岸田内閣の直近支持率はどの調査も20%前後に低迷。不支持が支持を大きく上回る。岸田内閣の終しゅうえん焉はいよいよ近い。 

最賃1500円を 

  「経済財政運営の基本指針」が「骨太の方針」の正式な名称。次年度予算編成の大枠を定め、また経済財政施策の短・中期の方向も示す。 

   今回の副題は「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現」で、持続的な賃上げを出発点に据えている。だが既に2年間も実質賃金のマイナスが続き、需要回復が経済成長を促すには程遠い現状。 

    
   肝要なのは最低賃金引き上げだが、骨太方針は10年先の目標に時給1500円を弱々しく掲げるのみ。全国一律1500円以上の早期実現なくして、成長型経済など絵に描いた餅でしかない。 

潜在成長率の低迷 

   今年の骨太方針の特徴は、「潜在成長率」への言及。人口減少が2030年代に加速する等を挙げ「我が国の潜在成長率は長期にわたりゼロ近傍の低成長に陥りかねない」と強い危機感を記した。 

   潜在成長率は経済の基礎体力を示す。日本は1980年代には3~4%台だったが、今は0・6%ほど。ゼロあるいはマイナス成長の時代が迫っている。この最大の要因が、少子高齢化による労働力人口・労働投入量の構造的減少である。 

   潜在成長率低下を緩和できる直近の課題は、女性の労働条件を大胆に改善し女性の労働参加を高めること。男女賃金格差の法的是正、パート雇用の正規労働者化、これらによる年収の壁の解消など。だが骨太方針は女性活躍を語るのみで、現実の改革には全く消極的。政府の本気度が問われる。 

産業支援には熱心 

   一方、熱心なのが半導体など先端産業への支援。一昨年に設立した国策会社ラピダスに9200億円補助するが、骨太方針はさらに、民間融資の負債返済の政府保証=「必要な法制上の措置を検討する」と異例の明記。 

  だが骨太方針には日本の科学技術衰退への反省はない。いま日本の国立大教員(40歳未満)の60%近くが有期雇用。基礎的研究と人への投資を怠ってきたツケが、産業力の後退なのだ。さらにこれが潜在成長率の低下に繋がってきた。 

自民党政権終焉へ 

  今年の骨太方針は日本の「失われた30年」を映し出している。私たちの課題は岸田内閣終焉を、自民党政権と新自由主義の終焉に結びつけていくことにある。