今週の新社会

新たな戦死者を
祀るか靖国神社

2024/08/14
「日本の近現代戦争は聖戦」とする史観に基づく靖国神社


敗戦から79年
戦争国家へと突き進む 
 

     敗戦から79年、アジア侵略戦争を「聖戦」とし、新たな戦死者を祀ることになるかもしれない東京・九段の靖国神社。新社会党員らは7月29日、同神社と「アジアへの侵略は正しい戦争」とする聖戦史観に基づく遊就館を、内田雅敏弁護士の説明で視察した。

   今年は日本のアジア侵略の基盤を作った日清戦争から130年。当時、朝鮮を侵略していた日本は1894年8月1日、清国に対する明治天皇の「宣戦詔勅」を出した。 

    靖国神社は、日清戦争を契機に「鎮魂」から「顕彰」への施設に変わり、第二次大戦では将兵の心の拠り所として戦死者が「英霊」として祀られる戦争推進の神社となった。 

     靖国神社は、天皇のために戦った戦死者の「魂の独占」という虚構から成り立つ。遺族は、戦死した家族を思い涙する。 

     内田弁護士は、戦後の平和運動がこのような遺族に寄り添うことがなかったのではないか、無宗教の国立追悼施設を造って天皇の兵士や戦死者だけではない全戦没者を慰霊する場を造らなくては、靖国神社と聖戦史観は生き残ると指摘する。 

    遊就館1階には、1943年10月の泰緬鉄道開通式に使われた機関車が展示されている。泰緬鉄道の工事では、連合軍の俘虜(捕虜)や現地住民17万人を動員し、5万人の俘虜のうち約1万3千人、現地住民はその何倍も死亡した。

    そのため、B・C級戦犯を裁いたシンガポール裁判で俘虜収容所所長など95名が絞首刑を含め重罰に処せられた。戦争犯罪の証拠である機関車を展示する遊就館には、このことは書いてない。 

     自衛隊発足70年の今年、靖国神社の宮司に2人目の元自衛官が就任した。1人目の松平永芳宮司はA級戦犯を合祀した。2人目の宮司、大塚海夫元海将は何をなすのか。 

     昨年から今年にかけて、自衛隊幹部の靖国参拝が明らかになっている。戦争国家へと突き進む中で、新たな戦死者を祭る施設として靖国神社を必要としているのではないか。