今週の新社会

ナガサキを最後に

2024/08/21
核兵器廃絶を訴えて活動する「高校生平和大使」と「高校生1万人署名活動」の100人が「原子爆弾落下中心地碑」を囲んで‶人間の鎖”=8月9日、長崎市の平和公園


世界は核戦争の危機  「草の根」の声を大きく


  79年目の「原爆の日」でヒロシマとナガサキは、戦争に対する対照的な姿を見せ、また、国際政治の二重基準を浮かび上がらせ、岸田政権の核廃絶の姿勢のいかがわしさを露呈させた。そして、核保有国が支配する国際政治に対する「草の根」の声と行動の重要性の高まりを明らかにした。

  広島市は8月6日の平和記念式典で昨年に続き、ウクライナを侵略するロシアとその同盟国ベラルーシを招待しなかった。しかし、パレスチナ自治区ガザでジェノサイドを繰り広げるイスラエルは招待した。

  「広島市は二重基準ではないか」と批判が起きたが、市の開催原則は紛争国であってもすべての国を招待し、被爆の実相と被爆者の思いを海外の代表に受け止めてもらおうというもの。それを歪めたのは日本政府。

  「ロシアとベラルーシを招くと政府の方針に誤解を与える」という外務省の圧力で広島市は方針を変えた。 

  一方、長崎市は8月9日の平和祈念式典でイスラエルを招かず、パレスチナは招待。これで露呈したのは欧米大国の二重基準だ。G7で日本以外の6カ国とEUは、イスラエルを招かなければ不参加と圧力をかけた。長崎市は方針を貫き、6カ国は不参加、EU大使は参加した。同盟国か否かで対応する米英などの二重基準が浮き彫りになった。 

  同様の二重基準は被爆地・広島選出の岸田文雄首相。核兵器廃絶を言いながら禁止条約締結国会議へのオブザーバー参加も拒否し、核を含む拡大抑止論で戦争国家へ突き進む。
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  原水禁長崎大会は8月7日の開会式に1000名が参加、日本がとるべき姿勢として、①核抑止力ではなく、核兵器禁止条約の署名・批准、②憲法の平和理念のもと、北東アジア非核地帯など、緊張緩和と軍縮に向けたリーダーシップの発揮、③若者による持続可能な平和構築を核廃絶の柱とする―の3点を指摘した。

  長崎市在住で平和運動を続ける荒木賢三さん(73歳)は、「式典に米欧6カ国が欠席したことに世界で大きな反響が起き、図らあずも米欧のイスラエル擁護の本音が露呈した。核戦争がいつ起きてもおかしくない中で、『長崎を最後の被爆地に』が一気に世界でクローズアップされた」と語った。