今週の新社会

原発は最悪の環境対策

2024/09/04
首相官邸前の「原発いらない金曜行動」で歌う日本音楽協議会の皆さん=今年3月12日

経済合理性もゼロ 
目的は核兵器への転用

  環境政策論が専門の明日香壽川(あすかじゅせん)・東北大教授は、「原発は最悪の気候変動対策」と断じる。一方、岸田政権は原発を二酸化炭素排出対策に有効と「原発の最大活用」に転換した。まさに麻薬中毒さながらの「原発中毒」だ。経済合理性も全くない原発を、国民負担で存続させてはならない。

  福島第1原発事故以降、原発の安全対策コストは増大するばかりで、使用済み核燃料は処理できず、運転は綱渡り状態。それでも原発利権にしがみつく原発業界や、おこぼれにあずかる政治家は原発維持・推進に躍起だ。 

  経済産業省は、能登半島地震で停止中だった志賀原発が大事故に至らなかったことを幸いとばかり、原発新増設の費用を電気料金に上乗せする新たな国民負担を検討している。新増設に及び腰の電力企業の不安を取り除こうというのだ。 

  日本原子力発電は敦賀原発2号機について7月下旬、原子力規制委員会が新規制基準に適合していないと結論づけ、1号機同様に廃炉の方向になった。東海第2原発も安全対策工事が更に1年かかり、水戸地裁が稼働停止を命じた裁判も東京高裁で係争中だ。 

  それでも日本原電の23年度の営業収益は967億円、純利益は25億円。発電していないのに収益があるのは東京電力エナジーパートナーなど電力5社が負担する基本料金があるからだ。これにならって経済合理性のない仕組みを原発新増設に応用しようというのが経産省だ。 

  明日香教授が今年5月7日、参院経済産業委員会で参考人として述べたのは、米政府機関のエネルギー情報局が毎年発表している米国の電源別の発電コストだ。 

  それによると原発の発電コストは太陽光の2倍、また、20年10月の国際エネルギー機関(IEA)のデータでは、太陽光発電新設の温室効果ガス排出削減コストは 「原発運転延長」の約6分の1。 

  このように経済合理性も二酸化炭素排出でも劣る原発に政府がこだわるのは、核兵器転用技術の潜在能力維持だ。マクロン仏大統領は20年12月8日、原子炉メーカー・フラマトムの工場で「原発なくして核兵器産業なし、核兵器産業なくして原発なし」とスピーチしたという。 

  行き着く先が核兵器という「原発中毒」の根本治療には、政権交代という特効薬が必要だ。