今週の新社会

物価上昇 特 効 薬 最賃アップ
30年も賃上げなし
生活苦の対策は焦眉

2022/11/09
最賃再引上げを厚労省に求める最賃引き上げ委員会の記者会見
=10月24日、厚労省記者クラブ



  9月の物価上昇率は前年同月比で、消費税増税時を除くと31 年ぶりに3・0%と発表された(総務省、10月21日)。その直後の24日、「最低賃金大幅引き上げキャンペーン委員会」が厚労省に対して最低賃金の再改定を求めて交渉した。食料品や電気代をはじめとした物価高騰が暮らしを直撃するが、実質賃金が上がらず、円安対策も打つ手なしの政府の経済対策も効果が見えない。最低賃金の大幅見直しが緊急課題だ。

  最賃キャンペーンが再改定求め政府交渉 

  30年間も賃金が上がらない国・日本で、非正規職や失業者の生活苦対策は待ったなしの状態だ。改善の特効薬は最低賃金引上げと消費税引下げだが、この2点と円安政策は、大企業や資産家の利益獲得の源泉だ。 

  したがって岸田政権が打ち出した総合経済対策は、共同通信社の調査で「期待できない」「どちらかといえば期待できない」が71・1%に上る。 

  最低賃金大幅引上げキャンペーン委員会(最賃委)が行った厚労省交渉でも、最賃委側は「10月から発効となった最賃全国平均961円は、最賃引上げ基準となる基礎的支出項目の物価上昇率(4月4・5%)にも満たない不十分なもの。欧米諸国では物価に対応して随時最賃が改定される。日本でも中央審議会の開催で協議ができるのだから開催すべきだ」と迫った。 

  しかし、厚労省側は「物価高だけに限定しないで、総合的な見地から判断」と逃げる。その総合的見地からの政権の総合経済対策への期待は広まらない。対策の目玉の電気やガス料金の引下げも、事業者に対する補助金ではなく、消費者に直接2カ月分無料などの対策を取るべきだ。 

  さらに、「今年4月までの物価で判断した10月の最賃では生活できない。その後の物価を反映した最賃審議会を開催すべき」と非正規職に賃上げが届かない中では、臨機応変の最賃引上げしかないと、再度の審議会開催を求めた。 

  もはや経済先進国とは言えない賃金水準、大企業への納入単価切下げで経営が苦しく、最低賃金を賄えない中小企業が大多数を占める日本社会は、一方で大企業の莫大な企業内部留保や経営者の巨額の報酬、配当金の増大を生んできた。 

  それを理解しているかのように、岸田文雄首相は「新しい資本主義」を掲げたはずだ。しかし、旧統一教会以上に政治に密着する財界の見返りをあてにした政治資金と選挙支援を断たなければ、国民の期待する総合経済対策は打ち出せない。 

  国民生活を打ち捨てておいて「防衛費」GDP比2%、その財源は消費税増税という政府・与党の方向はもってのほかだ。