今週の新社会

マイナンバーカードなければ有料
保育料 給食費 学用品費…
ありえない差別
岡山・備前市

2023/02/15
  これまで無料だった保育料と給食費や、小中学校の給食と一部の学用品費が、マイナンバーカード(カード)がなければ有料化される。しかも、無料は世帯全員のカード保有が条件という暴走行政・自治体が出現した。

  瀬戸内海に面し、備前焼で知られる岡山県備前市(吉村武司市長、人口約3・2万人)は、減り続ける人口対策として子育て支援サービスを進めてきた。学校給食の無償化は、22年4月から始まったばかりだ。

  「カード保有が条件」は、農業・漁業者対象の資材価格等高騰対策の国の補助金にも適用するという。

  問題の発端は昨年12月16日、備前市教育庁が保護者向けの通知で、これまで自動的に無料化していたものを、カード所有者に限り申請により納付免除するとしてきたこと。目的を「マイナンバーカードを全市民が取得することを目指しているため」としており、あまりにも乱暴な行政運営と言うほかない。

  これに対して、任意取得のカードの有無で差別するのはおかしいと、「子ども達への平等な教育・保育を求める実行委員会」がオンラインと紙で署名運動を始めた。1月29日時点で、4万1751名の署名を集め、事前に市長との面会の約束を30日に取りつけていたが、当日、「公務が入った」として面談できていない。

  「デジタル田園都市構想」でカード保有を進める政府は、松野博一内閣官房長官をはじめ、いずれもこの事態に対して態度をあいまいにしている。それはカード交付率で地方交付税に差をつける政府自身が備前市同様、権力的だからだ。

  しかし、法的根拠もなく、子育てサービスに差別を持ち込むのは行政のとる立場ではない。この事態を見過ごせば今後、国もカードの有無で各種サービスに差をつけ、「作らないものが悪い」論が横行する恐れがある。