今週の新社会

中国・関電が調査申入れ
山口・上関町に使用済み核燃料の貯蔵施設

2023/08/16
非公開が慣例の町議会全員協議会(8日)を公開で開くよう岩木和美議長(左)申し入れる町民有志=8月7日、山口県上関町役場


「原発に頼らない町へ気運できてきたのに」

   
中国電力は8月2日、原発建設を計画している山口県上関町に使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設のための調査を申し入れた。西哲夫町長は議会に諮って結論を出すとしたが、町民は強く反発している。

    中国電力の背後には、福井県内の原発から使用済み核燃料県外移転を迫られている関西電力がいる。中国電力には施設建設の資金力と緊急性はなく、調査と建設は関電と共同で行う。 

    21年に青森県むつ市の中間貯蔵施設への運び込みを拒否された関電は、40年超の老朽原発(美浜3号機、高浜1、2号機)の再稼働の条件として、中間貯蔵施設建設予定地を23年中に確定し、30年ごろに2000トン規模で操業を開始すると県に約束している。 

     中間処理施設問題で追い詰められた関電は今年6月、フランスの再処理場に一部搬出する計画を発表した。 

      しかし、福井県議会の自民党会派の山岸猛夫会長が6月県議会の代表質問で、「お茶を濁しただけ」と断じた。 

      関電の各原発は、4〜7年で使用済み燃料プールが満杯になる。青森県六ヶ所村の再処理工場も見通しがない。窮余の一策として関電は、建設の見通しが立っていない上関原発敷地に目をつけた。 

     これに対し、「上関の住民は原発計画浮上から41年間、町内を二分する対立で疲弊しきっている。フクシマ事故以降、ようやく対立を乗り越え、原発財源に頼らない町作りを目指す機運が醸成されつつある中での暴挙」と反発するのは、「上関の自然を守る会」の高島美登里共同代表。 

     1日に中国電力が町長に申し入れに来ることを知った高島さんらは役場入口で待ち構えて入庁を拒んだ。 

     高島さんは「中間貯蔵とは名ばかりで最終処分場になる危険性が大」であることや、「事故が起これば瀬戸内海は死の海となり、沿岸住民の被る被害は計り知れない」と怒る。 

     高島さんは、町民の間でも「寝耳に水の計画発表でばかにしている」「原発と核のゴミは別問題」など批判的な声が拡がっていると指摘し、「『核のゴミお断り!』『自然豊かなふるさとを守ろう!』と全力で闘う」と訴える。 

    今回の唐突な上関町への申入れは、原発が出す核廃棄物の処理はできないことを如実に示すと同時に、関電などのその場しのぎの経営体質を示すものだ。