今週の新社会

漁業者ら提訴
放射能汚染水の
放出差止め求め

2023/09/20
集会で弁護団から訴状の骨子などの説明を受け、デモ行進をして
福島地裁に向かった=9月8日、福島市内


約束ホゴ 反対無視

環境法規や条約に違反

    政府・東電による福島第一原発の放射能汚染水海洋放出強行に対し、差止めを求める訴訟が9月8日、漁業関係者を含む市民151人が原告となって福島地裁に提訴した。原告・弁護団では10月末日を目途に第二次提訴を予定しており、10月10日を期限に原告を募っている。

   「ALPS処理汚染水の海洋放出差止め訴訟」と銘打った提訴は、2015年に政府が文書で行った約束「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」が、福島県漁連だけでなく全国の漁連の強い反対の声を無視してホゴにされた上に、「環境法規や条約に違反する可能性がある」などと指摘、「(汚染水の)海洋放出を許すわけにはいかない」として行われた。 

     また、汚染水放出によって漁業者の魚介類の販売が著しく困難になるほか、漁業関係者以外の住民も魚介類を食べることで健康被害を受ける可能性があるという不安をもたらすことで平穏に暮らす権利が侵害される、としている。 

      請求は、①国は5月10日付で行ったALPS処理水の海洋放出に係る実施計画の変更の取消し、②放出設備の使用前検査合格の取消し、③東電は放出の中止、を求めている。 

     提訴に当たって福島市内で原告らは弁護団から訴状の骨子の説明を受け、裁判所までデモ行進を行い代表団が訴状を提出した。

無責任極まる「希釈安全」説 

     原発事故被害者らでつくっている「相双の会」会長で今回の裁判の原告でもある國分富夫さんは次のように話した。 

     海洋放出が一番安上がりということで、「海水で希釈して放出するから安全」とは無責任にも程がある。薄めても放射性物質がなくなるわけでもない。 

      12年以上前の事故で大量の放射性物質が自然界に放出され、今度は海洋放出。「廃炉の妨げになるから海洋放出」と言うが、デブリの取出しは30年以上も先であり、タンクの撤去を急ぐ必要などない。 

      また、敷地内や近くには7、8号機の建設予定があり、タンクを造る場所はたくさんある。大型タンク増設や、モルタル固化など有効な代替案は全く検討されていない。