今週の新社会

自給率改善 欠除
「食料・農業・農村基本法」改定案

2024/04/17
「種子を守る!緊急院内集会」で講演する鈴木宣弘・東大大学院特任教授(右上)=4月4日、参院議員会館

「法案」出し直すべき

    いのちと暮らしに直結する「食料・農業・農村基本法」の改定案が3月26日、衆議院で審議入りした。食料安全保障が目玉だが、自給率低下への反省はなく、自給率の改善策に欠ける。農村は農業の衰退とともに過疎化が進んだ。世界は食糧難の時代。欠陥法案は出し直すべきだ。

     日本の食料自給率38%、OECD加盟30カ国中、下から3番目。英国は日本が下げ続けた30年間に46%から74%に上げた。日本の農業・農村の疲弊は工業製品輸出の犠牲となり、米国の農産物につぶされてきたためだ。 

     日本の種子(タネ)を守る会(会長=秋山豊JA常陸組合長) は4月4日、農水省担当者や国会議員を招いて「種タ ネ 子を守る!緊急院内集会」を開いた。中心要求は種子の自給だ。 

    主食のコメは自給率100%で、種子も自給している。一方、自給率90%の野菜の種子の8割は海外産だ。しかも、そのほとんどが一代雑種(F1)で、毎年購入しなければならない。輸入に頼る肥料が入ってこなければ、自給率は22%に下がる。天候不良や戦争、何らかの理由で物流が途絶えれば、「世界で最初に飢えるのは日本」といわれる。 

    ところが、日本は種子法を廃止してコメなど主要穀物の種子の育成や低廉な供給から撤退。優良種子や情報を営利企業に提供する農業競争力強化支援法を制定したのだ。更に種苗法を改悪して種子の自家採取を事実上禁止。これらは、多国籍アグリ資本の意向に従ったものだ。 

    そこへ食料・農業・農村基本法改定案と食料供給困難事態対策法案だ。基本法改定案は種子を守る院内集会で出された不安に応えていないばかりか、植物工場などIT技術による「フードテック」で生産性をあげることが中心。高齢化と生産コスト割れで離農が止まらず、若者は生活費が賄われない職業を選択しない。 

    農業再生に必要なのは、財務省が拒否する農家への直接支払いや個別所得補償だ。農産物へのコスト転嫁で値上げされて困るのは低所得の消費者。だから、国庫がバランスを取る所得移転が必要だ。 

    スイスの「供給保障支払い」は、生産コストと販売価格の差額を補てんするもので、経営面積に応じて金額を交付する制度だ。こうした農業・消費者支援によって、食料の安定供給と農村の再興をはかるべきだ。