今週の新社会

改悪許すな
入管法大詰め

2024/06/19
移住連などの入管難民法改悪に反対するシットインであいさつする全労協の渡辺洋議長=6月6日、参議院議員会館前


永住の権利奪う
外国人の人権を軽視

 
難民認定申請3回以上は強制送還できるとする改悪入管法が、6月10日に施行された。さらに今国会では軽微な罪で永住外国人の永住権を取り上げる改悪が自民、公明、維新、国民などの賛成で衆院を通過、参院法務委で大詰めを迎えている。 

  日本は、1981年に難民条約を批准した。条約の原則は自国民と同一の処遇を与える内国民待遇だ。日本政府には難民を保護する国際法上の義務がある。しかし、40年余たっても外国人の人権は軽んじられている。 

  出入国在留管理庁によると、23年の難民認定者数は289人、申請処理件数の3・53%にとどまる。「難民」の定義について国際的な基準から離れた解釈が一因だ。

  さらに、外国人は犯罪予備軍と見る警察の対応。愛知県警の『執務資料 若手警察官のための現場対応必携』(2009年) に、「不良来日外国人の発見」の心構えとして「一見して外国人と判明し、日本語を話さない者は、旅券不携帯、不法在留・不法残留、薬物所持・使用、けん銃・刀剣・ナイフ携帯等、必ず何らかの不法行為があるとの固い信念を持ち、徹底的した追及、所持品検査を行う」とある。 

  人種差別的な職務質問、いわゆる「レイシャル・プロファイリング」で、社会の民族差別を助長する。このような中、難民申請者や、何らかの理由で「不法滞在」となっている外国人に就労制限や健康保険に加入できないなどがあるのは、難民条約違反であることは明らか。 

  スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件などで一度廃案になった入管難民法改定案が、昨年の通常国会で成立、難民申請3回以上で強制送還できることになってしまった。 

  さらに永住外国人が税や税金、社会保険料を滞納した場合や、在留カードの不携帯なども永住権取り消し対象になる入管難民法改定案の審議が参議院で大詰めを迎えている。 税などの滞納は、失業や病気による収入減で起こりうるし、在留カードを忘れた場合も永住権取り消し対象となるのは、まさに外国人差別だ。 

  移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)は5月15日、「日本に安定的な生活基盤を築いてきた人に不安を与え、差別と偏見を助長しかねない。すぐに撤回すべき」と4万筆余り反対署名を法務省に提出した。 

  同様に横浜華僑総会(謝成發会長)など在日華僑17団体は5月21日、「入管法改定案は永住者の生活、人権を脅かす重大事案」とする声明を出し、政府宛に「法律案から永住資格取り消し事由を拡大する条項の削除を求める」陳情書を提出した。