道しるべ

外交・安全保障政策の転換点
湾岸戦争から30年

2021/02/23
 今年は1991年1月に始まった湾岸戦争から30年。日本はこれを契機にPKO法制定・海外派兵常態化、数度の防衛大綱改定や集団的自衛権の行使容認によって自衛隊はますます肥大化している。

 1990年8月、イラクは隣国クウエートに侵攻し全土を占領した。国連は無条件撤退決議、経済制裁決議などで武力侵攻を非難、事態打開へ武力行使容認の決議678を採択した。91年1月17日、米国を中心とする30カ国による「多国籍軍」がバグダッド空爆を開始し、「湾岸戦争」が始まった。

 この戦争で米ブッシュ政権は、武力行使の「正当性」を口実に日本に戦闘参加を求め、日本は代わりに総額1兆7千億円を資金提供した。
 
カネではなく人を

 しかし、クウエート政府の謝意表明に日本の名はなく、また「カネは出すが人は出さない」との批判的世論が作られ、「湾岸戦争トラウマ」が吹聴された。

 自民党政権は、「トラウマ」に乗じて国際貢献の名の下に人的貢献・自衛隊海外派遣(派兵) に大きく舵を切った。ペルシャ湾の機雷除去のため自衛隊法99条による掃海艇派遣、92年6月、国際平和維持活動(PKO)協力法、2001年にテロ特措法と、次々に自衛隊の海外派遣関連法制定が強行されてきた。

 「湾岸トラウマ」に始まった自衛隊の海外展開と海外での日米軍事一体化の進行は、日米同盟の変質をもたらした。

 日本の軍事戦略を定めた防衛計画大綱はこれまで6回改定され、日米軍事同盟をより深化させた。2023年度までの「大綱」は既に見直しが進んでいる。

 見直しは、中国、朝鮮を仮想敵国とした日米同盟の強化(米軍の肩代わりを自衛隊にさせる戦略)を軸に、「敵基地攻撃能力」「島しょ防衛」や、宇宙・サイバーなど新領域の9項目をポイントとしている。
 
互恵と信頼に基く

 防衛大綱の見直しと一体的に尖閣諸島周辺における中国の脅威が扇られ、政府も野党も世論もナショナリズで覆われ、引くに引けない事態すら懸念される。

 中国も尖閣諸島を「核心的利益」として軍事力も辞さない構えを強めている。武器使用を容認する「海警法」を2月1日施行し、日中の偶発的な武力衝突の危険性が増している。

 求められているのは、対決から互恵と信頼に基づく日中関係を構築するために、憲法の精神に基づく平和外交に転換させる声を強め、自衛隊の肥大化に歯止めをかけることだ。