鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

デモと民主主義 第49回

2021/04/13
 ミャンマーの国軍治安部隊による、市民の虐殺はすでに510人を越えた(3月末現在)。子どもでさえ無造作に撃ち殺す残虐さが、軍隊は市民感覚とまったくかけ離れた存在、との証明である。

 昨年5月、米国ミネソタ州で黒人男性フロイドさんを路上に倒し、膝で絞め殺した警察官の裁判が始まったが、被告の警官は罪を認めず無罪を主張している。

 国家権力である軍隊と警察が暴走しないかどうか。それを抑える力が民主化力だが、権力化を強める菅逆走政権への明確な対抗がさらに重要だ。

 3月27日、東京日比谷野外音楽堂で「さようなら原発首都圏集会」を開催した。よく晴れて、緑が美しく映えた、集会日和だった。入場者を半分に制限、マスク、手指の消毒厳守での集会だった。

 90歳の澤地久枝さんが、「反原発の志を、いのちある限り広げていきたい」と発言して、大きな拍手が湧いた。

 国と東電の事故責任を追及する、福島原発刑事告訴団の地脇美和さん、東海第二原発の運転差し止め判決を獲得した原告団の大石光伸さん、脱原発の政治家や経済人の団体である原自連会長の吉原毅さん、落合恵子さんや私の挨拶のあと、デモ行進。

 コロナ禍のなかでのデモは、批判が出るのでは、とやや不安だったが、沿道のひとたちは昨年9月のデモのときよりは、さらに暖かい表情で迎えてくれた。脱原発はいまや日本人の確信となった。あとは廃絶の国会決議だけだ。ドイツのメルケル首相の英断に続こう。

 韓国、台湾、香港。若者たちのデモが民主化をもたらした。ミャンマーは、いまその産みの苦しみのなかにある。残念ながら、この国の若者のデモ参加者は圧倒的に少ない。

 警察のデモ規制が厳しくなってきた。関西生コン労組への苛烈な弾圧の例もある。でも、ミャンマーのように狙撃されたり、手榴弾を投げ込まれたりはしない。と言って、こちらの力が弱まると、弾圧は強まる。そうさせないためにも、若者たちの政治参加の拡大が必要だ。彼らが参加しやすい運動をどうつくるか。それが問われている。