鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

温暖化とエネルギー危機 第81回

2021/12/08
 マクロン・フランス大統領が「原発建設の再開」を表明したテレビ演説は、原発推進派を活気づかせそうだ。 

 小泉純一郎元首相や河野太郎議員のように、自民党内にも原発推進政策への批判派が出はじめて、福島原発事故から10年がたって、ようやく原発の終焉にむかう機運が出てきたのだが、残念だ。 

 フランスは電力のうちで原発依存率が高い国(約4分の3を占める)だが、その反省のないまま、原発建設再開のアクセルを踏むのだろうか。 

 マクロンは、「50年目標のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡)を達成し、エネルギー自給体制の強化」が目的というのだが、CO2削減、カーボンニュートラルの大命題が、もっとも安易な原発復活への道を拓くのでは、「毒をもって毒を制す」危険極まりない世界に引きもどされることになる。 
 
 ドイツのメルケル首相は福島原発事故のあと、いち早く脱原発の方針を決定して、もっとも先進的な脱原発国となったのだが、キリスト教民主同盟(CDU)にちかい、日刊紙「フランクフルター・アルゲマイネ」は、「22年末の原発廃止を見直すべきだ」とのキャンペーンを展開している( 熊谷徹「東洋経済」11月27日号)。「われわれドイツ人は英仏の姿勢に見習い、原子炉の稼働年数の延長をタブー視するべきではない」との主張が、堂々と紙面化されている、という。 

 石油やLNG(液化天然ガス)価格高騰によって、電力不足が喧伝されるようになった欧州ばかりか、隙あらば原発の復権を、虎こ視し 眈たんたん々と狙っている日本の原発メーカーや電力会社、経産省、政治家、学者などの原発マフィアも、また息を吹き返そうとしている。 

 COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議)も、新興国の「大気中の温室効果ガスは先進国が排出したもの」とする批判との調整がついていない。 

 地球温暖化危機と世界的なエネルギー危機との同時進行が、脱原発運動に重くのしかかってこようとしている。あらたな学習が必要だ。