鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

戦争お化けの徘徊  第98回

2022/05/04
  難民500万人。ほかに国内避難者が700万。あわせて1200万人の生活が破綻した。死者の総数はまだわからない。ロシア兵もふくめると、数万人におよぶであろう。ロシアのウクライナ侵攻はこれから最悪事態になる。プーチンは国境の港湾都市・マリウポリの陥落を狙っている。 

  ウクライナのゼレンスキー大統領は、徹底抗戦を呼びかけている。アメリカなどの西側諸国は、対戦車兵器、対空ミサイル、長距離榴弾砲などの重火器の供与をさらに拡大しようとしている。 

  子どもをふくむ市民の大虐殺が激しくなろう。それでも、仲裁の道を探るのではない。武器を与え、徹底的に戦わせる、米露の代理戦争のようだ。

  大量殺戮が続いていてもわたしたちはなにもできない。その無力感が打ちのめす。集会をひらいたり、抗議デモをしているが、まだまだ歯止めには遠い。G7加盟国は兵器を増産し、戦争が終わると復興事業で儲けるのか、と思わせるほど「和平」に無力だ。 

  ウクライナ支援国としての日本は、防弾チョッキを供与したあと、ヘルメット、防寒服などを送り、さらにドローンまで含めるようだ。ロシア軍の位置情報を探る無人飛翔体でも兵器として扱わず、これから輸出で儲けるつもりか。 

  「武力による威嚇又は武力の行使は…永久にこれを放棄する」とする日本国憲法第9条の精神は、紛争当事国への加担なども禁じている。国際紛争は武力で可決しない、そのための「名誉ある地位」を占める、とわたしたちは決意した。 

   安倍・菅継承岸田内閣は、トランプ政権がもとめるままに、兵器の大量購入をすすめ、日本の兵器メーカーへの発注を急減させていた。が、この戦争のどさくさに紛れて、武器輸出の突破口をひらこうとしている。 

  「基地に限定する必要はない。向こうの中枢を攻撃することも含めるべきだ」と安倍元首相は、ウルトラ発言ほしいまま。戦争犯罪人プーチンに27回も面会して洗脳されたのか。いまわたしたちの最大の恐怖は「戦争お化け」が世界を徘徊するようになったことだ。