鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

「技能実習生」の暗闇 第146回

2023/05/10
   外国人労働者の永住者を拡大する、との方針を政府が発表した。外国人労働者は今年2月末現在、14万6千人いる。在留期間は最長5年、家族帯同はできない、いわば出稼ぎ労働者である。 

    これは飲食料品製造、農業、介護など12分野ではたらく「1号」労働者といわれるひとたちだ。 

    在留期間の制限がない「熟練した技能が必要」、現場統括などができる「2号」労働者は、建設と造船現場だ。たった10人、という差別的な政策だった。 

    永住させると「事実上の移民」になる、とのおっかなびっくりの自民党なのだ。ところが、労働力不足が激しくなって、これから製造業やビルクリーニング、宿泊、農漁業などへ、資格の制限を緩めようとしている。 

    そこで思いだされるのは、かつて労働者派遣法を制定して、身分不安定な派遣労働者を導入したとき。はじめは「専門職」などと制限していたが、その後工場労働者へ拡げた歴史がある。それが現在の非正規労働者が全労働者の4割を占める、半失業者の大群をつくりだした。 

    それでいて、いま、「労働力確保」掲げ、低賃金の外国人労働者を拡大しようとしている。将来、人口が減って労働力不足となるが、それは結婚できない非正規労働者が大量に発生しているからだ。 

    外国人の永住を拡大させると言いながら、「入管法」を改悪する。難民保護の思想がない。「不法残留」として、「送還忌避者」の難民申請を受け付けず、強制送還を可能にする法改正を図っている。 

    このように、ヒューマニティに欠ける、ご都合主義、利用主義政治が罷り通っている。外国人労働者への視線は、「大日本帝国主義」時代のままだ。これまでも労働者がたりないと、ブラジルから「戸籍謄本」持参の日系人を呼びよせ、不況になったら一斉に帰国させている。 

    労動力は欲しい。が、永住されては困る。日本人より安い労働者をすこしだけ永住させる、といっても、やがて日本は世界の低賃金国となって、見向きもされなくなる。相手のことを考えない利用主義は、罰当りだ。