鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

核はモラルを破壊する  第159回

2023/08/16
  1954年、米政府の招待をうけて、カリフォルニア州バークレイにある「ローレンス放射線研究所」を見学した中曽根康弘氏が、翌年の衆議院予算委員会で、2億3500万円の原子炉建造予算を提案、成立させた。 

  アイゼンハワー大統領の「アトムズ・フォア・ピース」という名の「核の商業利用」の御先棒を担いだ予算獲得だった。 

  2億3500万円は、広島、長崎を一発の原爆で破壊させた、ウラン235の威力をもじったもので、それが日本最初の核開発予算だった。日本学術会議の原子核特別委員会(朝永振一郎会長)は、原子力の平和利用を強調して「公開・自主・民主」の三原則を提起した。 

  しかし、その後の原発建設は「カネ・カネ・カネ」を前面に立て「秘密・強制・独裁」の暴力で進行した。わたしは、70年代はじめの柏崎・刈羽原発と伊方原発反対運動から取材をはじめたが、その後、各地をまわって、「原子力」といいながら、実態は「金権力原発」「金子力原発」だ、と書いてきた(『日本の原発地帯』)。 

  原発を「トイレのないマンション」と批判したのは、物理学者の武谷三男さんだったろうか。70年代ごろからよく使われて、すでに常套句。いままさに自腹満杯の時代を迎えた。トイレばかりか、本体の「老朽マンション」の処分の時代になった。 

  もんじゅは「夢の高速増殖炉」と呼ばれ、使用済み核燃料からプルトニウムとウランをとりだして「MOX」燃料にして、永遠に原発を稼動させるという触れ込みだった。が、ナトリウム漏れなどの事故によって撤退、立ち腐れ。青森県六ヶ所村の再処理工場は、着工から30年経っても完成しない、試運転さえ14年間、実施されていない。 

  いま、最終処分場どころか、再処理工場に運ぶまで一時的に預かる、という、下北半島むつ市の「中間貯蔵施設」も稼働に入れない。こんどは関西電力が山口県上関町につくりたい、との申し入れ。地球を汚染する核廃棄物汚染土、汚染水処分。核のごみの移動もまた、カネ、カネ、カネ。すでに死臭が漂っている。