鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

秘密の核施設誘致(上)  第180回

2024/02/07
  山口県熊毛郡上関町。柳井市から瀬戸内海に突き出た半島を、どんどん南下した先にある。 

  中国電力の原発建設地予定地だが、その先にあるちいさな離島・祝島のひとたちの、40年以上にわたる反対運動のしぶとさで知られている。島の人びとの生活と運動は、纐纈(こうけつ)あやの映画『祝(ほうり)の島』( 2 0 1 0年)によく描かれている。 

  原発建設が行き詰まった挙げ句の果てにでてきたのが「使用済み核燃料中間貯蔵施設」の建設計画だった。 

  その秘密話がでていたのは2019年ごろだったが、計画が明らかにされたのは、昨年8月。西哲夫町長が、いきなり「調査受け入れ」を表明して、町長のクルマが抗議デモの町民に包囲される結果になった。 

  ところが、1月24日、こんどは突然、中国電力による予定地の森林伐採がはじまった。中国電力は豊北町の原発建設に失敗、上関原発もいまなお見通したたず、所有しているのは、島根原発の二基だけだから、関西電力の使用済み燃料も収容するようだ。 

  しかし、能登半島の大地震による、避難生活の悲惨さが日夜報道されて、かぼそい半島の立地状況がいかに原発施設の立地に不適合かを証明している。都市から離れた過疎地を狙っての建設の強行は、いまや絶対矛盾となった。 

  この中間貯蔵施設の調査受け入れについては、町議会の「全員協議会」で討論されてきた。が、不思議なことにも、それは「秘密会議」だったのだ。 

  「福島の原発事故を挟んで約20年続いた柏原町政は、原発に頼らないまちづくりと急速に切迫する財政との間で打開策を見いだせずにいた。中間貯蔵施設の研究を提案したのは、無投票で5選を決めた頃。『大変つらい道になる』と語っていた」(「中国新聞」23年12月26日)。 

  柏原前町長が病気で辞職、西町長が初当選してから議会での誘致の意見が強まった、という。「原子力発電所ができないなら、中間貯蔵施設を誘致していただきたい」。しかし、議会でのそんな議論が秘密とは、信じがたいことだ。