鎌田 慧 連載コラム
「沈思実行」

靖国再稼働の野望  第188回

2024/04/03
  2013年に強行採決された「特定秘密保護法」は、知る権利や研究・報道の自由を規制する悪法として、日弁連などが強く反対した。その後の「身辺調査」の動きは深く潜行している。どのような保護の成果になったかは明らかでない。 

  11年が経って、今度はその経済版である「重要経済安保情報保護法案」が、衆院本会議で審議入りした。特定秘密の上に、さらに半導体製造や宇宙開発など、企業の「重要経済情報」の漏ろうえい洩が処罰の対象になる。 

  この間、警視庁公安部による大河原化工機の会社幹部が「経済安保」の犠牲になったことが明らかになった。同社の噴霧乾燥器の輸出は、生物兵器の製造に転換可能だ、としたのは「捏造」、「冤罪」だった、と現職警部補が暴露した。これから経済安保の名目での拡大解釈がふえそうだ。 

  前々回に書いた「防衛装備品の第三国移転」という名の「戦闘機輸出」。れっきとした武器輸出だが、三菱重工などの兵器産業の要請に応じて、岸田内閣が「現在、戦闘が行われていると判断される国へ移転する場合を除く」との但し書き付きで、戦闘機の輸出を解禁する。 

  プーチンのウクライナ侵攻やネタニヤフのガザ侵攻では、戦闘機よりも無人機が「活躍」している。それを見れば、大枚はたいての新型戦闘機開発がどれだけの意味があるのか。平和憲法は戦闘行為厳禁。共同開発国の英伊がその戦闘機で人殺しをしても、「戦闘は行われていない」と責任を回避するのか。 

  そればかりか、戦時体制に備えたかのように、自衛隊幹部が靖国神社に集団参拝している。さらに今度は、海上自衛隊の元海将( 海軍大将)が天下りかのように靖国神社の宮司に就任する。 

  靖国神社は日本軍人の教育支柱、陸海軍所管の国家施設だった。が、今は戦犯も祀る一宗教法人に過ぎない。戦争反対の兵士までも強制的に祀ったとして離脱を求める裁判も起きている。首相の参拝は、政教分離の原則に違反する。 

  靖国神社はこれから来る自衛隊員を、元海将が迎え入れる、憲法違反の装置となるのか。